二つの柔軟性

投稿者: | 2021-03-04

 最近は野球やサッカーなどのスポーツ中継をテレビで観ることがめっきり少なくなった。あんなに大好きで毎週欠かさず観ていたFCバルセロナの試合も、7~8分程度にまとめられたダイジェストを観れば充分な感じだ。スポーツそのものが嫌いになったわけではない。ただちょっと1試合約2時間という長い時間を取られてしまうと、他のやりたいことに影響が出てきてしまう。優先順位が下がってきたということか。そんな私でも元々は野球少年であったし、身体を動かすことにはまだまだ興味があり、インターネットでも新聞・雑誌でも、何かとスポーツに関連した話題には目が向いてしまう。

 若いスポーツ選手がこれから成長できるかどうか、伸びしろがあるかどうかを予想する指針として、私が注目するポイントが2つある。プロ入りできた選手やアマチュアでも新聞の活字になるような選手は、素質があるのが当たり前なのでそれは当然あることとして考えた上で、一つは「頭の柔軟性」。頑固なのは良いことだと思う。野茂英雄投手のように、自分を信じスタイルを突き通すことは、厳しい世界を生き抜こうとする中で、唯一の方法なのかもしれない。その上で私は、その選手が頑固に己の道を研ぎ澄ませつつも、他者からのアドバイスを吟味できる性格かどうかに注目している。一度聞いて、必要ないと判断すれば捨てればいい。吟味することが大切だと思う。脚光を浴びたり、調子が良いときは、人間誰しも天狗になりがちだ。聞くことすらウザく感じるときもあるだろうし、しかしそこに落ちし穴が潜んでいる。そういうときこそ「謙虚」でいるべきなのではないか。吟味することは自分の状態の再確認にもつながるはずだ。このポイントは練習風景を観たり、インタビューを聞いたり読んだりしないと分からないので、ある程度の観察期間がないと判断がしにくい点ではある。

 二つ目は一目で分かる「体の柔軟性」。いわゆる体が硬いとダメだと思う。運動の中心はすべて腰・体幹から始まり、もしくは始めるべきで、そこが揺らぐとすべてのバランスが崩れてしまうと考えている。そしてその腰・体幹の力をいかに増幅して、指先足先に伝えられるかが、プレーの質を左右し、引いてはスポーツ選手として活躍できるかどうかのカギになってくる。増幅する秘密は、筋肉や関節における「しなやかさ」にあると思う。強くパワーのある筋力は不可欠だ。トップクラスの選手にはさらにその強い筋肉と筋肉をつなぐ腱や関節にムチのようなしなやかさが必要だと思う。それによって力の伝わり方が大きく変化すると考えている。それにこの要素はなんといっても、ケガから選手を守ってくれるはずだ。

 かつて巨人に高校生ドラフト1位で入団した期待の大型サウスポーがいた。彼のプロ一年目の自主トレで撮られた何気ない写真が当時新聞に載っていた。キャッチボールをしている写真で、足下にきたボールに対応しようとしゃがみ加減の姿の、膝から下の角度がやたらと気になった。足首が全然曲がっていなく、膝から下が地面からほぼ直角に近い角度で立っていて、いかにも体が硬そうだった。嫌な予感が的中し、結局彼は一度も一軍で登板することなく8年後に引退した。高校時に150キロを超えるストレートを投げ、サウスポーということも有利だったはずだが……。「身体が硬かった」だけが早い引退の理由ではない。ケガにも長く悩まされたそうだ。ただ力任せだけで生きられる世界はそう広くはないと思う。

 最近、背中で手を合わすことに挑戦中……。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください