酔狂

投稿者: | 2021-03-14

 「単細胞」という言葉がある。科学的な難しい方ではなく、人の悪口を言うようなときに使う方の意味で。「シンプル イズ ベスト」という決め台詞がある。本当に英語を母国語とする人たちに意味が通じるかは知らない。どちらも「単純」ということが言いたくて出してみたのだが、私が物事をあれこれと考えるときにポイントになる言葉で、私自身を表現するときに非常に有用な言葉だ。
 本当に正直に告白すると、私は俗にいうところの、「頭がいい人間」ではないと思っている。頭の中で複雑な論理を組み立てて研究し、答えを見つけ出すような難しい作業には常にかなり苦しむ。やることが決まって、あとは頑張るだけというシチュエーションでは、結構活躍できるタイプだと思う。そんなにバカでもないとは思うが、まぁ、普通なんだろうか。本当に単純で分かりやすいタイプだ。一つの事しかできない性質とも言い換えられる。今でこそ色々違う種類のこと、仕事以外に他の勉強や趣味、トレーニング等に同時に取り組めるようになってきている。人間的に幅ができたと言えるのなら嬉しいが、さぁどうだろう?

 若いころ、特に大学時代は一つのことに熱中すると、他のことはおろそかにしてしまう傾向が強かった。上京して初めて一人暮らしを始め、極端に言えばすべてが未知の体験で、一つ一つとことん“しゃぶりつくして”みないと、興味が次へ移っていかなかった。
 何かをしようと狙いを定めて取り組んだことはあまり無く、引きこもっていた大学1年目を経てアルバイトを始めた後は、もちろんアルバイトでは一生懸命働いたし、たくさんの友達ができ、また海外旅行へも行ったり、彼女ができたり、そのほか様々なチャンスが何となく目の前に現れてきた。

 その中で、興味があれば何でも精一杯全力で取り組む私が、ある時期とことん心を捉えられていたのが、「夜の飲み会」だった。ちょうど気の合う仲間とアルバイト先のレストランで知り合い、彼らと一緒に昼間に懸命に働き、毎晩飲みに行った。ホントに毎晩だった。その輪の中心に私はいつもいた。
 当時はまだカラオケBOXができ始めたころで、飲みながら歌を歌おうとしたらカラオケスナックが主流だった。仲間と発掘したある一軒のスナックで、だいたいいつもは4人くらいで通うのだが、たしか2年半くらいの期間にボトルキープをしたウィスキーの本数は300本を超えた。その日の稼ぎをその日のうちに使い果たしていた感覚だった。ボトルキープ100本目と300本目の時に、私がその店を借り切って大パーティーを催した。眠らずに遊びまくった。とにかく楽しくて楽しくて仕方がなかった。クレイジーな時代。

 そういう狂気じみた時間には、遅かれ早かれ終わりが来る。身体もお金も心も限界だった。疲れた。当然のように私にも「このままではいけない」という自覚が見栄えることになる。結局私はそのレストランを去った。仲間を傷つけたかもしれないけれど、みんなのためにもそれでよかったと思っている。
 「最初からそうなるのが分からなかったのか!?」と誰かが私に怒鳴っている。「はい、分かりませんでした!」。だって、やってみなきゃ分からない。経験しないで物事の論理だけで宣うのは簡単だが、私には到底できない。バカな経験かもしれない。でもあのバカ騒いだ時代が、間違いなく、今の私をググっと支えてくれている。

  みんな、どうしてるかな~。

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