老眼

投稿者: | 2021-07-11

 目が良いのが自慢だった。両目ともずっと1.5だった視力がここにきてガクッと落ちたようだ。ちゃんと測った訳ではないので曖昧だが、もしかしたら遠くはまだ見えていて、近くがダメなのかもしれない。要は老眼が酷く進んでしまった感じだ。辞書は肉眼ではもう無理だし、少し暗いところにいると新聞もキツい。とても不便を感じている。

 気持ち的には不便による不快感に留まらない。恐いのだ。今まで見えていたものが見えなくなっていくことが、こんなに恐ろしいとは知らなかった。ずっと目が良かったために眼鏡をかけるという行為に全く縁がない。ファッションで若い頃に“ダテ”眼鏡をかけていたことがあったがそれもほんの一時だけで、それよりも目の前に異物が乗っかっている不快感に耐えられなかった。年配の方が人を馬鹿にしたように眼鏡をずり下げながら、上目遣いで相手の顔を覗き込むようにして話をする様子に、強い嫌悪感を覚えていた。しかし今ならそれもよく理解できる。若い頃に気づけなかったことは思っていた以上に多い。老眼鏡と虫眼鏡を二つずつ購入し、自宅と職場にそれぞれ置いた。“見える”安堵感が嬉しい。

 胴体もそうなのだが、それよりも顔の“あぶら”分が酷く気になるようになった。私は髪の毛が薄くなったので、全部剃っていわゆるスキンヘッドにしている。だから「顔」というよりも頭皮の部分も含めて「頭」の油分といった方が正確かと思う。これが非常に多く分泌されるようになったと感じている。以前から多い体質で、たまたま気になり出したのかもしれないが、気になり始めてしまったらもうダメだ。特に就寝時が酷く、枕にタオルを巻いて寝ていたが起きる頃にはもうどこかへ行ってしまい、安全ピンを使って留めるも今度はピンが外れて頭に刺さるのが恐くて眠り辛くなってしまった。仕方がないので枕カバーを頻繁に取り換えてもらうことで対応している。
 最近は「薬用ボディペーパー」なる良い製品が出回っている。30枚入りを4つ購入し二つずつ自宅と仕事場に置き、使い切る前に必ず買い足しておくようにしている。職場の方が使用頻度は高く、最低一日に一回は使用している。夏場はやはり一番多く使う。これは本当に強力な製品で、何か危険な成分が含まれているかと怪しまれるくらい、肌の油分をキレイに拭い去ってくれる。使用後のスッキリ感は洗顔に勝るかもしれない。

 何もないところで躓いたり、人の名前が覚えられなくなったり、肩を思うように上げられなくなったり、ついさっきまで覚えていたことを「今、何しようとしてたんだっけ」とつぶやきながら失念したり……、そうやって歳を取っていく。苛立ちながら恐がりながら工夫して対応しながら、衰えが見えてきた部分を補っていく。これからもまた新しい「衰え」、いや元い、新しい「発見」が私を待っていることと思う。止めることはできないが遅らせることはできるかもしれない。私のことだから、できる範囲でムリはしないと思う。結果的に長生きしたかではなく、「これからをどう生きるか」が、自分らしさに繋がっていく。

 眼鏡、ちゃんと作ってもらおうかな

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