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投稿者: | 2021-07-28

 「スタートレック ネクストジェネレーション」(以下「SNG」)という海外ドラマがかつてあった。ちょうど私がカナダに住んでいた1994年に、SNGの7年間にわたる放送が終了した巡り合わせだった。カナダで観るまでは番組自体があることを知らなかった。子供の頃からこの前身作に当たる「スタートレック」の大ファンだった私は、幼なじみに久しぶりに再会したようにSNGに懐かしさを覚え、またその新しい友人の新鮮な魅力に引き込まれていった。SNGは大ヒットした作品で、カナダのテレビ局やケーブルテレビなど、どこかしらの局で何度も再放送されていたので、7シーズン分の全エピソードをそれぞれ2~3回ずつは観たと思う。もっとかもしれない。

 カナダ時代、日本人の友達も含めて友達がいない訳ではなかった。しかしやはり日本人の友達と一緒にいる時間よりも英語を話せる機会を増やそうと、カナダ人の住んでいるシェアハウスに住んでみたり、カナダ人に紛れてコンピュータの初心者コースを受講してみたりと、その他いわゆる日本人によく“あるある”の努力をしていた。どこかで心細いし、無理して寂しかったんだと思う。英語もずいぶん上達はしていたが、完全にスッキリと理解出来るわけではなく、話す方はまだまだだった。ストレスも溜まっていたことだろうと思う。そんな毎日をSNGは支えてくれた。
 ドラマの内容は「エンタープライズ」という名の宇宙船の乗組員たちが、広大な宇宙を舞台に繰り広げるSFアドベンチャーなのだが、私はそのクルーの一員になったかのような親近感に浸りながら、彼らと一緒に果てしない銀河の冒険に挑んでいたような感じだっただろうか。観ているととても勇気づけられたし、毎回終わって欲しくなかった。彼らの間にいつまでもいたかった。

 アマゾンプライムで「スタートレック ピカード」という番組を見始めた。SNGの続編だ。途中に映画作品を挟みながらも、連続テレビドラマとしては実に26年ぶりの制作になる。SNGで艦長役として主役を務めた俳優がそのままの主役を演じ、「その後」の世界での冒険が再び始まる。主役以外のレギュラーキャストは新しい俳優陣で構成されているが、エピソードによってゲストスターが登場する。かつてのエンタープライズのクルーたちが出演し、新シリーズを盛り上げてくれる。私のようなオールドファンにはたまらないサービスだ。
 観ていて、彼らだと分かったときの感動は説明のしようがない。作品のストーリーがどうとか撮影の方法がああだとか、彼らが歳を重ねて太っていたり老けていたりとか、そんなことはどうでもよかった。ただただ懐かしく、昔お世話になった人たちに再会したような感謝の気持ちが自ずと頬を流れ落ちる。私は心の中でつぶやくように声をかけた。「It’s been a while.」

 本当に歳をとって涙もろくなってしまい、そうでなくても醜いのに、あんなにビチャビチャで無様な顔は他人には見せられない。彼らを通してカナダで藻掻いていた頃の若い自分を思い出すのかもしれない。いつまでも心の奥に留まり、時として私を励ましてくれる底知れない映像の力に、改めて驚きと感動を覚える。さぁ、もう一っ飛び!キャプテン、お願いします!!

 Engage !

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