別れ

投稿者: | 2021-08-23

 私はスポーツに関して、「する」のは野球が好きだが、「観る」のはサッカーが好きだ。もう中学校時代からそうなので、理由を訊かれても答えられない。私にとってはそれが自然だ。そして多くの人がそうであるように、アルゼンチン代表の現キャプテン、リオネル・メッシ選手の大ファンだ。態度がどうとか給料が高すぎるとか色いろ批判はあるけれど、卓越した技術と信じられないような得点感覚にはいつも陶酔させられてしまう。私の知る限りでは最高のサッカー選手だ。

 そのメッシ選手がこの夏、長年プレーしたスペインリーグ所属のFCバルセロナというチームからパリのチームへ移籍した。メッシ選手は自身が13歳から19年程を過ごしたバルセロナを離れることが決まり、不本意な結果に悲しみに暮れた姿を記者会見で見せていた。私も多分15年くらいの長い時間にわたってメッシ選手とFCバルセロナを追いかけてきたので、それが本当に終わってしまうことが未だに信じられない。キャリアの絶頂期は確かに過ぎた感じはするが彼はまだ32、3歳で、ここぞという時のキレは他の追随をまだまだ許さない。今なお世界最高のサッカー選手だと思う。お別れはまだ先のことだと信じていたので、驚きと寂しい気持ちはしばらく続きそうだ。

 メッシのいないFCバルセロナの試合を観た。世界の中でも常に強豪と謳われるチームで、メッシ以外にも極めて優秀な選手が揃っている。メッシがいなくても強いチームだと思う。しかし昨日はアウェイ試合で対戦相手もなかなかの強いチームだったこともあって、相当に苦戦していたように見えた。シーズンの初めに当たり新加入メンバーもいる中で、選手同士が紡ぐコンビネーションが、特に前線でまだ確立されていないこともあろうかと思う。でもそういう状況的なことではなくて、この試合、観ていて寂しく感じた。いつものようにディフェンス陣から中盤へ、中盤から前線やサイドへとボールが運び出される過程で、私はどうしてもメッシを探してしまう。いないと分かっていても「メッシだったらこうするだろう」とか、「そこでメッシが持ったら周りがああ動くだろう」とか、目に見えない亡霊を追うように自然と“幻影”と一緒に観戦してしまった。中継した解説者とアナウンサーもメッシの話題を常に語っていた。みんながメッシをバルセロナのピッチ上に見ているんだと思う。

 一説によると、メッシ選手は給料を50%カットして契約する予定だったそうだ。何とそれでもFCバルセロナはチームトータルで選手給料の限度額を超え、そして一人の選手につき前年の給料から50%以上のカットはダメだそうだ。それが全て本当ならメッシ選手は出ていかざるを得ない。コロナで試合に観客を入れられなかったことがチームの財政難の大きな要因の一つでもあると思う。メッシ選手はコロナの犠牲者の一人と言えるのかもしれない。残念だ。
 そもそも一流と呼ばれるサッカー選手たちの年棒・移籍金が高すぎる。年に10憶とか20億とか、メッシ選手のように100億円とか稼がなくても人間は充分生きていける。子供たちの夢のためにとは言うけれど、何も王様のように暮らす必要はないのではないか。世界中で貧困問題が叫ばれる中、至極バランス感覚を欠いた話だと思う。恐らく選手たちの手を離れたところで、エージェントやその他の金の亡者たちが選手の周りに“はびこった”結果なんだと想像する。私にとって悲しい出来事になった今回のメッシ選手のことやコロナのことも含めて、スポーツバブル界に警鐘を鳴らすきっかけになることを期待する。

 いつかまたバルサに戻ってきて欲しい

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