ジェットコースター

投稿者: | 2021-08-28

 20代の頃、物理的に高いところは、取り立てて好きということはなかった。かと言ってさほど苦手意識もなく、普通と言った感じ。ところが同じ高いところでもジェットコースターに限っては居ても立っても居られないくらい、もの凄く好きだった。隙あらば一回乗り終わって降りた瞬間、入り口までダッシュで戻り、何回か連続して乗ったものだ。閉園間際のディズニーランドで、大人気でいつも行列ができているあの「スペースマウンテン」に3回連続で乗ったことがあるのは今でも自慢だ。
 確か、那須ハイランドパークだったと思うが、あそこのジェットコースターで両手を上げて乗っていたら、「これで両手を離すとは、強者ですね」と言われたことは今でも自慢だ。勇気のこともそうだが、降下中にもの凄いGがかかるので体勢が前のめりになってしまうところを耐えて、バンザイしながら姿勢を正すのは結構大変だった。「助けてくれ~!」と爆笑しながら叫ぶと楽しさが倍増する。できないと分かっているのに、わざと「止めろ~」等と大声を出してみたりもする。お勧めだ。

 40歳くらいになってきて、ジェットコースターはおろか、乗り物酔いをするようになってきた。自分で運転している分には問題ないが、長時間乗車するバスでは顕著で、自家用車でも後部座席に乗っていると酔うまではいかなくても、何だか胸がムカムカするような症状が出る場合がある。そんな時はたいてい鼓膜の中に密度の濃い空気が溜まってしまったように感じて、聞こえが悪くなる。特に医者にかかった訳ではないけれど、自分の感覚的には三半規管が弱ってきているような気がする。そうなってくるといつの間にか高いところもダメになっていた。高いところに立って下を見ていると、何だか足元がフラフラしているように感じてしまう。ちょっと酔うような感覚かもしれない。

 そういった自覚症状が出てくると、何だか急に自分が老け込んでしまったようで悔しかった。それはそれで誰もが歳を取っていくんだから仕方のないことで、でも何とかその流れに抵抗したかった。それでランニングを始めたのが、今では水泳や脳の能力開発など、いろいろなトレーニングに力を入れるようになったきっかけだったかもしれない。あれからもう10数年経つが、たぶん細々と続けている体力トレーニングの効果はあって、遠出をするときには乗り物酔いの心配自体を忘れてしまっている。さすがにジェットコースターを前にウズウズすることはもうないが、たまに軽いアトラクションには乗ってみたりしている。高いところに関しては絶望的で、恐怖感を拭い去ることはもうできそうにない。

 空を飛ぶ夢をよく見る。いつか人間が空を飛べる日が来るだろうか。高いところから落ちる夢をよく見る。やっぱり人間は飛ぶべきではないのだろうか。落っこちる先が決まって大きなゴミバケツの中なのは、どういう暗示があるのだろう?
 かつてジェットコースターに乗っていると、空を飛んでいるような錯覚を覚えた。自分の体が大空に投げ出されるような、恐怖とスリルを満喫していた。それはどこまでも青い空にすぐそばまで迫れたような、ほんの一瞬の大冒険だった。人々の空を飛ぶ夢を支えるためにも、「安全」にお願いします。

 高台から見下ろす景色は大好きだけどね~

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