運命の人

投稿者: | 2021-10-05

 たまには女性の話もいいかなと思って。私が女性の話をしようとすると必ずと言っていいほど「失恋」の話になってしまう。本当にモテない人生だった。失恋に次ぐ失恋の連続。惨めな思いはいくらでもした。でもそんなことを言ってしまうと、数少ない私の彼女になってくれた方々に申し訳ないので、愚痴はこれくらいにしておく。愚痴ではなく、今日はちゃんとした失恋の話。

 20代中盤の頃、付き合ったばかりの彼女がいた。彼女と呼ぶのも躊躇するくらいまだ付き合い始めたばかりの時期に、私がどうしても田舎に帰郷しなければいけない状況になり、確か10日間くらい会えないことになってしまった。最初の大切な時期に離れ離れになった状況は、考えてみると致命的だった。田舎に帰って本当にすぐくらい、確か3日も経っていない時に彼女から電話がかかってきた。彼女が発した言葉をハッキリとは覚えていないが、つまりは「別に彼氏ができた」ということだった。数ある悲惨なフラれ方の中でも相当上位にランクされるショッキングな捨てられ方だった。付き合ったばかりのラブラブで一番“いい”時に崖から叩き落された感覚。当然すぐに納得できるはずもなく、理由を問い詰めたが、すでに後の祭りだったようだ。普通に考えれば怒っていい状況だったが、不思議と私は別れを素直に受け入れた。

 その女性は少し“変わっている”印象があり、何と言うか、自分だけの独特の世界をもっている人だった。定められた運命を妄信するような、何%か少し「不思議ちゃん」っぽくもある。人に同調しない雰囲気で、自分をしっかり持っている感じ。他人に左右されるようなところが全くなく、いわば“強い人”という形容が一番合っているかもしれない。とても優しく愛情いっぱいなんだけれども、そういう芯の強さがあるところに私が惹かれて、お付き合いというところまで漕ぎつけたのだが、反対にその揺るがない部分が仇になってしまった。
 その後ちゃんと顔を合わせて落ち着いて話をした。「他の男性と“出会ってしまった”から仕方がないじゃん」と、そういう言葉ではなかったが、私はそんな感じで受け取った。私にしてみれば「私への残酷な裏切り」を、彼女は何の躊躇も見せず肯定してしまっていた。実際彼女がどういう心持ちだったのかは分からないが。自由でやっぱり少し変わった子だった。いずれにしても私の手には余る人だったということだろう。
 表面的には物分かりが良く潔い男を装ってはいたが、残念ながら私はそんなカッコ良さを持ち合わせた人間ではない。内心は未練タラタラで、悔しくて悔しくて暴れ狂いたかった。今でも振り返ると悔しい気持ちを懐かしく思い出す。大好きだったから。

 この出来事は今からもう26、7年前の話なのだが、何と今でも私は彼女と辛うじて繋がっている。連絡が取り合える仲なのだ。あの後彼女はしばらくしてからその男性と結婚し、二人のお子さんに恵まれたそうだ。大変だけど幸せだと言っていた。素直に良かったなと思う。
 私は男女の間で友情が成立することには否定的な立場にある。キレイごとを並べてみても、所詮みんな下心があるものだと思っている。そんなんだからモテないのかも。でも彼女の存在が「男女間の友情は、あり得るかもしれない」という希望をつなぎとめてくれている。

 今日これ、ちゃんとした失恋の話、かな~??

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