少しずつコロナの新規感染者の数が減ってきて、世の中が元の日常を取り戻そうという動きになってきている。マスクやソーシャルディスタンスの制限はまだしばらく続きそうだが、ワクチンを2回接種した人の割合が非常に高くなってきて、飲食店などの営業時間制限が解除され始めている。いよいよ再始動という感じだ。ニュースを観ていると、居酒屋や酒屋の方たちが、笑顔でやる気をアピールしていた。本当に喜ばしい兆しだ。
喜ばしいことには間違いないのだが、私の中で「いやいや、そんな急に元に戻るったって準備ができていないよ」と、簡単に言えばそんな思いがある。あまりにもこの規制された状態に慣れきってしまって、安定してしまった。おかしな言い方だが、この安定をまた壊して新しい“普通”の習慣に慣れていかなければならないかと思うと、やれやれといった感がある。ちょっとした不安さえ感じている。コロナをいい口実にしてやらずに済ませていたことを、やり始めなければならない億劫さも確かにある。生活に困窮されていた方々には甚だ申し訳ない言いようだが。兎にも角にも、とりあえず感染からは免れたようだ。
コロナ以前まではあまり気にも留めていなかったことだが、いわゆる「娯楽」というか、純粋に楽しむために人々が時間とお金を大いに使っていることがよく分かった。居酒屋さんなどでお酒類が提供できるようになり、途端にお客さんが押しかけゴクゴクと喉を鳴らしながら美味しそうにビールを飲んでいる姿を観て、ハッとした。「サービス業」という仕事の偉大さを瞬時に直感した気がした。
こんなに嬉しそうな表情をしている人が日本中にいて、その笑顔を支えている人たちがいる。それはお酒に限らず、人々が楽しんだり癒されたりできる環境を提供するもの全般についてのことだ。観光や観劇や観戦やスポーツジムやエステや習い事やエンターテイメント等々、余暇を有意義に過ごすための「不要不急」の事柄にどれだけ多くの人が携わり、また利用していることだろう。これらのほとんどすべての人・団体がコロナで活動を自粛、あるいは制限されていた。全く活動できなかった人もいたかもしれない。そう改めて考えると、これは本当に大変なことだったと思う。感染者が収まってきたからやっとそんな風に冷静に俯瞰で考えられるようになってきた。コロナが残した後遺症と言うか、爪痕が世間の明るみに出てくるのは、まだこれからなのかもしれない。
天災やこのコロナのような疾病に対して人間はあまりにも無力で、しかしその中を生き抜いて行かなければならない。その現実を受けて、悩み苦しみながらもどう対応していくかを考え実行していく。その営みは尊い。たとえ絶望しても、何とか励まし合いながら生きていきたいと思う。残念ながら、コロナはどうか分からないが、何かしらの災害はこれからも起こり続けるだろう。「被災→復興」、永遠にその繰り返しだ。もしそれが『人災』だったとしたならば、未然に防ぐ努力はしていくべきだが。
コロナ関連で亡くなられた方、また関係の方々に謹んでお悔やみ申し上げます。