Categories: Books

Teardrops

 感激・感動して涙するということがあると思う。しかし涙というものは残念ながら感動するときだけに表出するものではない。まさに悲しい時がそうであり、悔しい時にもこらえ切れずに、ということがしばしばあるかと思う。うれし涙なんかはいくら流してもいいと思うが、ポジティブな涙、ネガティブな涙、いずれにしても感極まって現れるものだと思う。心が動いていないのに泣けるのは、それは嘘か演技か、何かの間違いだと思う。
 随分と涙もろくなった。テレビのニュースで親が子供に食べ物を与えず、餓死させたなんて聞くと、一人の時はもう止まらなくなってしまう。真夏に小さな子供を車内に放置したとか、ちょっとあり得ないことが多すぎる。以前からこういうことは頻繁にあって、情報化が進んだから私たちの耳にも届くようになっただけのことなのだろうか。どうもそうとは思えない。子供に限らず、事故や火事などでも誰かが亡くなったと聞けば、泣かずとも随分と落ち込むようになった。自分のこととして考えられるようになった、いい傾向なのだろうか。分からない。些細なことでも心が動かされるように衰えてしまったということなのだろうか。

 一冊の本を読んでこれだけ何度も涙が流れたのは初めてだった。浅田次郎さんの「壬生義士伝(上・下)」を読了してのことだ。振り返ってみると笑いのない真面目な小説と言えると思う。全編を通して緊迫感があった。まぁ幕末の新選組を中心とした侍たちの話だから、そうなってしまうのは仕方がない。そうあるべきだった。最初はこの小説がどれだけ史実に忠実なのか興味があったが、読み終わった今、もうそれはどうでもよくなってしまった。たとえフィクションであったとしても、南部武士、吉村貫一郎の生きざまはこの胸に焼き付けた。嘘でも構わない。感動した。
 私は自分が日本人なんだなとつくづく感じた。主従関係とか年貢に苦しむ農民だとか、そういう話はあまり好きではなく、避けて通ってきた。アメリカンドリームみたいな話の方がスキっと晴れやかな気持ちになるし、景気がいいではないか。ところがここにきて、極貧の足軽侍という、自分の生まれ持った宿命に抗う侍にグッときてしまった。一人の男にとって、本当の「義」とは殿様のために命を捨てることではなく、家族を養うために生き抜くことだと悟った主人公は、相当にカッコよく素敵だった。誤解を恐れず、書く。「男の中の男」だった。

 私は自分で女性蔑視をする人間ではないと思っている。暴力も反対だ。そしてキリスト教の神さまとイエス様を信じている。しかし吉村貫一郎に感動してしまった今、私は自分が根っからの日本人だと認識する。これは果たして矛盾する現実なのだろうか。
 私は敬虔なフリをして嘘をついているだけなのだろうか。侍魂、日本人魂、大和魂。言い方は何でも構わないが、私の底に眠っているその「魂」は果たして、私の目指そうとしている「心」と相対してしまうものなのだろうか。所詮私には届かない「心」なのだろうか。いや、……。

 本の中である登場人物が言っていた。「御一新から50年が経ち、いい時代になったが、『男』がいなくなった」と。やはりあのような時代には、たとえ今日食べるお米がなくても、自分の子供を殺めるような親は、いなかったんじゃないかと、そう思う。

 ほんとに泣けちゃったんだよね~。

aRanDy

 自分のものの見方・感じ方・考え方を伝えたい。心を開いて本当のことを書かないと伝わらないと思う。だから自分と精一杯向き合って心の言葉と巡り合えるように祈ろうと思う。取るに足らないことでもいい。伝えたいと思ったことを素直に届けたい。  聖書の言葉に惹きつけられ恩師に教えを乞いながら数年研究してきた。クリスチャンではないしキリスト教がどういうものなのか理解しているとは言い難いが、書いていく中で聖書の香りが漂うような表現ができれば嬉しい。そして誰かに勇気を与える一助になれば幸せだ。 ////////////////////////////////////////  I want to convey my own way of seeing, feeling, and thinking. I don’t think it will be delivered unless you open your heart and write the truth. Therefore, I will pray that I can face myself as hard as I can and meet the words of my heart. Though it might be insignificant for others, I want to deliver honestly what I want to convey.  I have been attracted to the words of the Bible, and studied for about four years while asking my teacher to teach me. I’m not a Christian and it’s hard to say that I understand what Christianity is, but I’d be glad if I could express it with the scent of the Bible as I write. And I would be happy if I could help give courage to someone.

Recent Posts

されど5km[However, 5km]

 久しぶりに少し走った。どのく… Read More

2024-05-06

何も変わっていない[Nothing Has Changed.]

 やりたい事、またやらなければ… Read More

2024-05-05

査定要素[Assessment Factors]

 洗礼を受けてクリスチャンにな… Read More

2024-05-04

黄昏の向こう側[Beyond the Twilight]

 先日お年寄りに対する見方が変… Read More

2024-05-03

Face to Face.

 人と人とで意思疎通を図ろうと… Read More

2024-05-02

止まらない悪口[Unstoppable Bad Mouthing]

 敵を作ったり、悪者を仕立て上… Read More

2024-05-01