ダリル

投稿者: | 2021-01-03

 映画やTVドラマでいわゆるスプラッターものやゾンビもの等、血しぶきが飛び散ったり人間が惨殺されたりする、簡単に言えば気持ちの悪いグロテスクな種類の作品がある。私はこれが生理的に苦手で、いかに映画好きと言えどもこの手の作品はほとんど観たことがなかった。友人たちも私がそういうのを受け付けないタイプだと見えていたようだ。ところが初めて不思議なことにある作品にハマってしまった。


 ゾンビによってもたらされる「死」の危険に常に晒されながら、家族や友人など愛する人々を失いつつも何とか希望を持ってみんなで生き抜こうとする物語、それが「The Walking Dead」だ。殺戮シーンは、まぁ酷い。史上最悪に気持ち悪い。本当に気持ち悪いと思わせるだけ、特殊メークや映像合成の技術は超一流だと思う。人間に迫り寄るゾンビが日本刀で頭を真っ二つに切り裂かれながら倒れ込むシーンが良く出てくる。私はいつも気持ちが悪いと思いながらも「一体どうやって撮影しているんだろう」と本当に不思議で関心さえもしてしまっている。かつてスーパーマンが空を飛んできてマンションのバルコニーに降り立ちそのまま歩いた時の衝撃に匹敵する驚きだ。あのシーンだけ取っても、スタッフの技術と情熱、根気強さは称賛に値する。お金も相当にかかっていると思う。CG合成なんだとは思う。とにかくリアルですごい。


 この「The Walking Dead」はアメリカのドラマシリーズで現在シーズン10の放送が終了している。ということは少なくとも10年は続いている作品だ。もはや誰が主人公か分からなくなるくらいストーリー展開が目まぐるしく、しっかり観ていないと置いていかれてしまうような複雑で多彩な展開を見せている。主人公クラスの中にダリルという登場人物がいる。私の目には彼が非常にカッコよく映る。あれこれとあまり物事を深く考えず、戦闘能力が高く、非常に冷徹でかつ人情に熱い情熱家だ。多くを語らず必ず結果を残すクールさに私は無性に魅かれる。この“ボーガン”の名手、ダリルに若い人たちが憧れるような気持ちを持つのは私にはすごく良く理解できる。


 クリスチャンを目指す私がこのような種類の作品にハマっていることは大きな声では言えないと思っているのが正直なところだ。けれども好きな気持ちを抑えられない。今、シーズン10がAmazonビデオで無料解禁になったので正月休みにちょうど見始めたところだ。シーズン9を観終わってから随分時間が経っていたせいもあり、あんなに集中して観ていたつもりが少しストーリーを忘れてしまっている。思い出さなければと幾分緊張しながら見始め、やがてオープニングテーマ曲がかかると、表現に甚だ困るのだが、“また心を奪われてしまうだろうちょっとした恐れとマゾヒスティックなワクワク感”に襲われる。どっぷり感情移入して観たシーズン9までの経験が次なる過酷な冒険へと私をいざなう。連続して一気に観てしまうのはもったいないような気がするが、でも早く観たい。こんなに心を映像作品に持っていかれるのは随分と久しぶりだ。


 宝塚で起きたボーガンの事件がダリルを観た影響で起こったことではないことを願う。

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