入院(その2)

投稿者: | 2021-07-13

 大きな病院に来たことで幾分不安が取り去られた。あとはもうお医者さんに任せるほか手立てはない。開き直ったとも言える。救急で簡単な診察を受け、ちゃんとした検査は次の日にするということになり、有無を言わさず入院が決まった。とりあえずその日は強力な痛み止めを注射して痛みを抑えてもらった。その痛み止めが切れかかってくるとあの猛烈な痛みがキチンと戻ってくる。おかしな言い方だが、「これはちゃんとした病気だ」とやっと悟った。入院なんて中学生1年生のとき以来だと思う。面倒くさくて嫌だった。

 大きな病気はしたことがなく、風邪さえほとんど引かない丈夫な身体に育ててもらい、深く親に感謝している。だから一度このように病気をすると落ち込んでしまう傾向にある。この手に不安に慣れていない。しかしこの時は本当に痛すぎて不安を感じる余裕さえなく、全くの降参だった。
 痛み止めとは別に点滴を打たれていた。ずっと刺しっぱなしなのでトイレやシャワーも実に不便だったし、何より自分が病人のようで本当に嫌だった。それに少し良くなってくると退屈で退屈でどうしようもなく、イライラしっぱなしだった。友人が大事にしている「24」の全シーズンコンプリートDVDを持ってきてもらい、何とか凌いだ。

 胃カメラによる検査をする前に何かの薬を飲んだか注射したかしたときに、痺れと言うか、全身が一瞬ガッと熱くなったのを感じた。それまでに経験したことがない性質の刺激が全身を駆け抜けた。自分の力ではそういった効果を自分の身体にもたらすことはできない。とても恐かった。おそらくは劇薬だと思う。胃カメラ自体はそうでもなかったが、あの薬は恐い。麻酔の類いかもしれない。みんなはよく平気でいられるな~と感心する。もしまた胃カメラを飲むことになったら、またあの刺激を受けることになるのかと思うと躊躇する。動揺しながらも、とにかくその後初めて胃カメラを挿入した。
 よく分からないが胃カメラは小さな「手」みたいなものなのだろうか。胃袋を過ぎてさらに奥へ向かおうとする場所に心持ち白く変色している部分があった。そこをお医者さんが胃カメラで押してみた時に、ここ2~3日苦しみ続けてきたあの痛みが走った。「そこです、そこ!」と私が告げたことで検査はほぼ終了した。胃カメラを使ってはいるが、「押してみて調べ当てる」って随分原始的な検査だなと思った。でも場所を特定できたのは良かったはずだ。結果的にはっきりとした病名はつけられない程度だが、無理やりにつけるとすれば「十二指腸潰瘍」という診断だった。

 原因として考えられるのは『ストレス』だそうだ。心当たりがあり過ぎて失笑してしまった。ただストレスが病気に繋がってしまったのは初めてだったので、巷で言われている「ストレス病」がこの世に実在することを身をもって体感する結果になった。
 そういう未経験で想定外の出来事がジワジワ起こってくると恐ろしいし、衰えを感じずにはいられなくなる。この時は軽症でたった二泊三日のみの入院で事なきを得たが、一つムリをしないように普段から心がけるきっかけになった。精神的にキツいなと思ったら逃げるようにしていて、今では加減が分かってきたようにも思う。自分を追い詰めすぎず、期待しすぎず、いい意味で諦めてあげればいい。だって、あの痛みはもう二度と味わいたくないから。

 退院してすぐ生命保険に入りました

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください