Suicide Mission

投稿者: | 2021-07-26

 21:09、ある日ブログを書き始めた時刻。リミットまであと3時間弱。その日のうちに投稿が間に合うか、結構ギリギリの時間だ。目標は1,200字。できれば余裕でクリアしたい最低限の時数だ。ネタはまだ全く頭にない。さて、どうするか。
 その1時間くらい前に「あ~、そろそろ書き始めないと間に合わないな~」等とのん気にオリンピック中継を見ていたが、何となく風呂に入りたくなって風呂場へ向かってしまった。そう、危機が差し迫っているのに、そういう時に限って私は変に度胸があるというか、悠長に構えてしまうところがある。「まぁ~何とかなるよ」といった感じだ。

 「もう時間がない」という“ヤバい”シチュエーションは今まで何度かあった。日常的には仕事や約束の時間に遅刻しそうになることはよくあることで、納品が間に合わないとか打ち合わせに企画書の準備が間に合わないとか、“危機的”になるのはやはり仕事絡みになるかと思う。

 「今までで一番ヤバかったこと」で一つ思い出すのは、まだ独立して間もない30代後半の頃の出来事。段取りや仕事の受け方・やり方もめちゃくちゃで、まさに藻掻いていた時期だった。ディレクターとカメラマンの先輩方と3人で、車で隣県の工場へ撮影に行かなければならなかった。片道250kmを日帰りのかなり過酷な日程だったので、早朝に出発しなければならない。ところが私が別の仕事で追い込まれ、ビデオの編集を間に合わせるために前日の夜が徹夜になってしまった。確かその前の日もあまり寝ていなく、疲れが酷く溜まっていた挙句の徹夜だったので、身体は相当参っていた。少しでも眠らないと次の日がもたないことは百も承知だったが、納期に追い詰められていた。頑張って何とか朝までに編集を仕上げたが、納品に行けない。約束は明けたその日の夜までだった。

 先輩方と落ち合い、事情を説明して謝罪し撮影を二人だけでやってもらえるようにお願いした。しかし私のお客様なので最初のご挨拶だけはどうしてもやりに行かなければならないと思い、今考えると恐ろしいのだが、車2台で出発し一台のハンドルを私が握ったのだ。私だけすぐに帰ってきて、夜までの納品に間に合わせようとした。つまり一睡もせずに500kmを走破しさらに50km先の納品場所へお届けに上がるという段取りを組んだのだ。よく考えなくても自殺行為。

 私が高速を先に走り先輩方の車が続いたが、しばらくして恐らく私の車が居眠り運転で蛇行していたのだろう、先輩方の車が追い越し、サービスエリアへ誘導された。「危なっかしくて見ていられない。休憩してここから引き返せ!」と怒られた。先輩と言えどもこの工場の仕事に関しては私がボスだったので、敬意を表して一旦は従ってくれたが、みすみす後輩を死なせるわけにはいかない。申し訳なさとありがたさで感極まったが、涙も出ないほどに疲れ切っていた。先輩たちを見送り工場へはもう行かなくてよくなったが、すでに一時間以上は走ってしまっていた。一人でそのまま帰路へつくのは危険だと思い、そこでしばらく仮眠し体力の回復を待った。2~3時間眠っただろうか、深い眠りだったことだけはよく覚えている。

 無事に納品を終えたのは奇跡的だった。私にとっては奇跡だったかもしれない。私も頑張ったが先輩たちの助けがなければ成しえなかった。納品どころか高速の路肩に突っ込んで命を落としていたかもしれない。本当に稚拙な段取り・行動で迷惑をかけてしまった人たちには申し訳なく思う。しかしながら何だか懐かしく、とても愛おしい思い出だ。

 おお、何とか間に合いそうですな。

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