ゲーム・オブ・スローンズ(その2)

投稿者: | 2021-06-22

 いやぁ~すごかった。昨日、全部見終わって、ちょっと放心状態になっている。いわゆる“ロス”も感じているが、それよりも作品の素晴らしさに圧倒されて、作った人たちに本当に畏敬の念を抱く。よくぞここまでのものを創り上げたとぜひ賞賛させて頂きたい。

 シーズン1~6までは10エピソード(話)で構成されているが、シーズン7と最後のシーズン8は「7」エピソードでまとめられている。アメリカの事情に詳しくはないが、恐らく「1シーズン」というのは「一年間」という意味だろうから、最後の二年は一年間に7話しか作られなかったと理解する。一年間は52週あるわけだから、連続テレビドラマとして7話しかないのであれば大分寂しい感じがするが、しかし私の実感として、こんなすごいものをたった一年間でよく7話も作ったものだと驚嘆している。短めの巨大スペクタクル映画を一年で7本作ったようなものだ。もしかしたら前もってもっと長い時間、例えば20年とかをかけて作っておいて、満を持してOAを8年間にしたのかも知れないが。いずれにしても細部にまでこだわった膨大な作業量だと思う。

 思い返すと色々な事があった。欲望、裏切り、プライド、束縛、差別、妬み等々の感情が渦巻く人間模様の中で、残虐な殺戮が繰り返された。もう一度最初から観ることを考えるとちょっとしばらくはいいかなと思うほど、ストーリーに入り込んで自己を投影していたように思う。やっとここまでたどり着けたという、ある種の達成感を感じている。
 全編を通して気がついたことがある。登場人物が王や女王など自分が忠誠を誓った人たちに対して「ひざまずく」シーンが多くあった。「あなたに全てを捧げます」という忠誠を表すシーンになると思うが、観る度に心が動くのを感じた。間違いなく“ひざまずく側の方”に自己投影して生まれ出る思いだった。「無条件に全てを委ねる」とも言い換えられるかと思う。生命を何かに捧げる覚悟を決する姿に、私は強い憧れを抱いているようだ。

 主人公は最も忠義に厚い人間として描かれている。彼が真に忠誠を誓い、また最愛の人だった女王を暗殺する。己の信仰や愛を捨て、市民の平和のために決断した唯一の方法であり、英断だった。猛獣ドラゴンは母親同然の存在であった女王を失い、怒りと悲しみに吠える。しかしドラゴンはまるで主人公のその苦しみ・悲しみを理解しているかのように、人々の欲望の象徴だった「王のイス」を炎で焼き尽くす。跡形もなく葬り去る。女王は「王座」の魔力に翻弄された、紛れもない犠牲者の一人だった。そして時代は移り変わってゆく。
 目に見える世界においての何かに、例えば人間に、全てを委ねることはできないのだと改めて思う。人間は過ちを犯す。積極的に生きようと思うほどに、そこからは逃げられないのではないか。私心を捨てて人に尽くす姿が映し出される時、いつも感動を覚える。このドラマは随分ヒットしたそうだが、ヒットするということは多くの人々が求める何かを網羅している可能性が高いということだと思う。これからも素晴らしい作品に触れていきたい。

  あ~あ、終わっちゃった。ほんとのロスはこれからかな。

コメントを残す

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください