食べたい

投稿者: | 2021-09-01

 なかなか諦めが悪い性格というか、十中八九痛い目に遭うのが分かっていながら挑戦してしまう。バカは死ななきゃ治らないとはよく言ったものだ。

 小さい頃からカニが大好物で、食卓に並ぶと家族で争って食べていたものだ。特に甲羅の裏側のカニ味噌が大好きで、甲羅の中でそのままご飯と混ぜてから、醤油を少し垂らしていただくのがたまらなく好きだった。そんなに高級なカニである必要はなく、毎回しゃぶりついて隅の隅まで食べ尽くした。
 20代前半の頃、友人と4人で北海道旅行へ出かけた。札幌でお目当てのカニをたくさんいただいた。北海道の蟹が取り立ててもの凄く美味しいという印象は残っていないが、本場の毛ガニを食べられたという満足感はあったかと思う。ところがどうやらこの時、無理に食べ過ぎてしまったようで、その後お腹を壊してしまった。これがケチのつき初めで、以降カニを食べると必ずお腹を下すようになってしまう。
 しかし頭では“下す”からダメだと分かっていても、大好きなあの味を身体が覚えていて、美味しそうに茹で上がったカニを目の前にすると、ついつい口に運び入れてしまう。食べたいがあまり、何の根拠もないんだけれども「今日は大丈夫だろう」と高を括って放り込んでしまう。その度に必ず“痛い目”にあって非常に後悔し、そんなことをいったい何度繰り返しただろうか。

 これは10年程前の出来事になるが、私にとってもう一つの“下す”食べ物の存在に気づいていく。これも大好物だったエビだ。火が通っているエビは問題ないが、甘エビのお刺身など、生のエビが食べられない。味は大好き。舌が甘エビのあのトロッとした独特の舌触りとプリッとした食感をよく覚えていて、居酒屋などでは悔しい思いをかみ殺しながら泣く泣く他の人に勧める。お祝いの時のご褒美のようなキラキラした存在だった「ちらし寿司」が、私の中で影を薄めていった。
 カニを食べてお腹を壊すのはその時の体調のせいだろうくらいに軽く考えていたが、このエビの台頭で新たな疑念が湧いてきた。これは医者で調べてもらった方がいいかもしれないと思い、血液を採ってアレルギー検査をしてもらうと、まぁ見事に「甲殻類アレルギー」との診断が出された。子供の頃は大丈夫だったはずで、成長するにつれ体質が変化し、アレルギーになったと言うことなのだろうか。その真偽はもう確かめようがないが、少なくとも“下した”原因は、お腹を壊した記憶がトラウマになっているからではなく、また体調不良など、その日の調子が悪かったせいでもなかったのだ。長年の謎が解けてホッとした反面、これでもう「絶対に食べてはいけない」という最後通告を突きつけられたようなものだと気づき、呆然とした気持ちにもなった。

 私は人と比べてそれほど“食にうるさい”タイプの人間ではない。それでも食べる事への期待感は人並みにあるし、同じ食べるならより美味しいものをいただきたい。だから食べられないものがあるということは、美味しいものを口にできる確率が減るわけで、非常に残念なのだ。それも好きだったものを食べられなくなるというのは悲しい。
 エビカニの味が懐かしい。甲殻アレルギーの人にも食べられる方法は、何とかならんもんだろうか。

 生牡蠣もダメなんだよね~

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