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投稿者: | 2021-10-02

 小さい頃から本を読むのが苦手でコンプレックスがある。しかし本はダメでも漫画はむさぼる様にもの凄く読んでいた。「少年ジャンプ」と言う、今もあると思うが、週刊の漫画雑誌を毎週楽しみに待っていた。その他にも「少年チャンピオン」で「ドカベン」を読んでいたし、気に入ったタイトルは単行本を購入してもらってコレクションしていた。50巻くらいあったはずの「ドカベン」などは、購入して何周回読んだか分からない。
 当時はスポーツものが多かったのかもしれない。野球をはじめ、テニス、サッカー、ゴルフ、ボクシング、柔道、剣道、バスケットボール等々、漫画がきっかけで興味を持ち始め、ルールやテクニックの知識を覚えていった。私のスポーツ好きは間違いなく漫画のお陰だ。またスポーツではないが「北斗の拳」という大ヒット漫画があって、それは相当に楽しませてもらった思い出がある。毎週毎週本当に興奮して読ませてもらった。

 最近はめっきりお名前を拝見しなくなったが、戸田奈津子さんという、英語映画の日本語字幕の翻訳者がいる。他の肩書もお持ちかもしれない。一時期は英語の映画は全て戸田さんが訳しているんじゃないかと思うくらいだった。「また戸田さんだ」「まただ!」等とエンドロールの最後でお名前を見つけ、どんだけ仕事をしているのか反対に心配になったほどだった。大の映画好きの私はもちろん、多くの映画ファンがお世話になっている方。最近は非常の多くの翻訳者の名前を目にするようになって、少し寂しい思いはある。

 外国語の映画を観るときは、必ず「字幕版」を選ぶ。小さい頃から、気づいた時からずっとそうだ。つまり日本の声優がアテレコをしている「吹替版」は、覚えている限り観たことがない。だって声が違う人だから。違う人の声で観たら「おかしい」と単純に思っていた。英語の映画は英語で聴くのが当たり前で、そう言えば吹替版の存在価値を吟味したことはなく、目が悪い人や子供以外で一体「誰が観るんだろう」。
 そんな私にとっての “当たり前”の常識が、私だけの非常に偏った感覚であることが先日判明した。吹替版をまず選択する人に出会った。大げさではなく、ちょっと衝撃だった。字幕を追っていると、映像を見られないという基本的な理由らしい。追っつかないというか、つまり字幕を読んでいる間に画面が展開してしまうので意味が分からなくなってしまうということだそうだ。「それはあり得る」と思った。読むスピードは人によって違って当たり前で、私にはそういうことがないので、他人にも起こらないことだと思い込んでしまっていた。
 DVDなどになぜ吹替版が必ず付随しているか、少し考えれば分かりそうなものだった。ニーズがあるのだ。知らなかった。だとしたら声優の需要はもっともっと高まっても良さそうなものだとも思う。コロナもあってこれだけ動画配信サービスが活況を呈し、どんどんコンテンツを提供していかなければならない状況はバブルとも言える。彼らにとっては繁忙期に違いない。

 本は苦手だけれど、漫画と映画は観てきた。世間ではこういう人間を下に見る傾向がある。しかし例えば映画を1本2時間とか観れば、どのくらいの文字量を読んだことになるのだろう。漫画にしても部屋に籠って何時間もぶっ続けで読んでいたものだ。あれを本にすると何ページくらいになったのだろうか。単純に比較は難しいし、内容のことを問われれば、それは本の方がさぞ高尚な中身であることだろう。でも小さなころから「読む作業」はしてきていると言いたい。それが映画を観るときの字幕を読む速さにも繋がっているし、今本を読むときの基本姿勢にもなっている。何が言いたいかって、偉い人たちにそんなに漫画や映画をバカにして欲しくないなっていうこと。

 今は、何だか漫画が読めなくなっちゃった

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