窮地

投稿者: | 2021-10-10

 やるのは野球、観るのはサッカー。このスタンスが中学生の頃から身に付いている。アルゼンチンのマラドーナ選手に憧れたことから始まり、野球にはないサッカーと言う競技が放つ華やかさに今もなお魅了され続けている。私がサッカーを観始めた頃は、Jリーグなんかはまだ影も形もなく、日本サッカーは世界のトップ舞台から遠く置き去りにされていた。日本代表がワールドカップに出場することなどは夢のまた夢で、想像すらできなかった。

 ところが有名な「ドーハの悲劇」という、三浦知良選手やラモス瑠偉選手らが中心となって率いた日本代表チームが、WC出場まであと一歩のところまで迫った出来事から、日本におけるサッカーブームに一気に火がつく。1993年の出来事だそうだ。そうか、あれからもう28年も経ったのか……。驚くばかりだ。あの次の日の東京は、街が泣いていたように沈んでいた。忘れられない思い出だ。
 「ドーハの悲劇」と言うのは、文字通り「負けた」ということだ。目的を果たせなかったという結果だ。この失敗の記憶がこのあと大きな経験となって、日本のサッカーシーンを盛り上げていくことになる。「必ずワールドカップへ出場する」という願いは、“にわか”ファンも含めた全国のサポーターたちの共通目標になり、みんなの心を一つに結んでいった。私も間違いなく熱狂的なファンの一人で、試合を観ることはもちろん、その他代表チームの動向を我がことのように注視した。私たちの年代の特に男性は、当たり前のようにそうしていたと思う。そしてその4年後、みんなの願いが結実することになる。

 1998年のフランスWCに日本が初出場してから、そうするともう6回も連続で出場していることになる。凄いことだと思う。今ではもう出て当たり前みたいな雰囲気さえ漂っている。確かに個々の選手のレベルが上がってきて、今ではもう覚えられないほど多くの選手が日本を飛び出し、海外のサッカーシーンで活躍している。中には無名の選手が向こうで名前を上げて、逆輸入のように日本で注目を集めるケースも出てきている。本当に日本のサッカーを取り巻く状況は急速に進化していった。
 近々ドイツにヨーロッパで活躍する日本人選手をケアできる特別施設が建設されるというニュースも入ってきた。サポート環境の整備も進み、これから益々日本人がヨーロッパをはじめとする海外で頑張ってくれることだろう。本当の意味での国際人はサッカー界から排出される可能性が高くなるという理解でいいと思う。サッカーと言うスポーツが日本のために貢献できる内容は、私が思っている以上に幅広く大きな範囲に拡がっていくのかもしれない。

 さて、肝心要の日本代表チームが今窮地に立たされている。数字的には7回目のWC出場に黄色信号が灯っている状態だ。可能性が無くなった訳ではないが、ここから挽回するのは相当に厳しい状況にまで陥っている。出場することが当たり前のように慣れ切ってしまっている若い人たちのために、ここらで一度現実の厳しさを知っておくことは良いことだと思う部分が実はある。しかし大好きなサッカーにおける4年に一度の世界的祭典に、日本が出場できないのはやはり寂しい。だってその次はまた4年後なのだから。
 奮起を期待したい。いずれにしてもこのままズルズルと何も爪痕を残せず敗退してしまうことは、いろいろ非常にまずいと思う。せめて大陸間プレーオフに残るくらいまでの意地は見せて欲しい。日本代表というプレッシャーを背負い続けて奮闘する選手たちを、私ももう一度気持ちを入れ直して、応援したいと思う。

 どこかで私にも、「大丈夫だろう」という慢心があった

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