風呂とランニングと私

投稿者: | 2020-12-28

 高校の時の同級生が亡くなった。まだ50代半ばでの突然の死だった。詳しいことは分からないが、風邪の症状が出ていてPCR検査を受ける直前に容態が急変し、そのまま帰らぬ人となったそうだ。コロナに感染していたかもしれない。同級生なので同い年なわけで、私にも起こり得るということだ。恐れを抱かずにはいられない。それほど親しいという間柄ではなかったが、人当たりが良く、もうこの世にいないと思うとやはり寂しさを禁じ得ない。


 もう5、6年も前になるだろうか、家のトイレで倒れて救急車を呼んだことがあった。結果から言うと、俗に言う「貧血」の酷い部類の状態に陥ってしまったんじゃないかと思う。医者も原因が分からないと言うから予想するしかない。その日は夕方に10kmか15km走った後、おそらく30分から1時間くらいゆっくりと湯船に浸かって長風呂に入った。そして夕食時にビールを飲んだ。量は350mlか500ml程度でそれほど多くはなかったと思う。その後しばらくしてトイレで用を足している時に動けなくなった。とにかく苦しくて顔が上げられない。呼吸がしっかりできない。座っていられないほど苦しく動けないので、そのままトイレの床に崩れ落ちた。引力が私の周りだけ異常に強くなったように身体が重く身動きが取れない。尋常じゃない苦しみに焦燥感が募っていく。まるで頭が強力な磁力によって地面に押さえつけられているような錯覚に陥った。ゴリゴリとこめかみの辺りが床にめり込んでいくのに全く抵抗できない。首に力が入らないのだ。小さな水たまりができるほど大量の汗が滴り流れる。「こんなことで助けを呼ぶのは情けない、恥ずかしい」というプライドともしばらく格闘したが、「このままでは死んでしまう」という恐怖が頭をよぎったので家族に救急車を呼んでもらった。


 救急車が到着する頃には容態が安定してきていた。おそらく15分~20分くらいの一過性の発作だった。救急車には自分で乗り、座ったまま血圧を計ってもらったら確か75くらいだったと思う。いつもは130くらいなので非常に驚いた。本当に死んでいたかもしれないと引きつった。一応救急病院へそのまま運んでもらい診察を受け、異常なしと診断された。それ以来どんなに寒い日でも走った後は5分以上湯船には入らないことにしている。また夏でもランニング後のビールは飲んでいない。まぁ、家では元々お酒はあまり飲まない習慣なので問題は無い。とにかく強烈な恐怖を植え付けられてしまった。できればもう二度とあの苦しみは味わいたくない。


 「定年まであと長くて10年ちょっとかな」などと同世代と話す機会がある。定年までとか、じいちゃんが亡くなった年齢までとか、後期高齢者までとか、免許証返還期限までとか、色々カウントダウンできる年頃に入ってきた。そうなってくるとやれることも時間的・体力的に限られてくる。走れるうちに走っておきたい。泳げるうちに泳ぎたい。身体の悲鳴にも耳を澄ませて、残る時間を謳歌したい。いつ死ぬかはなかなか予想できないから。生きてるだけでラッキーだ。


 あいつ、最期苦しんでなかったらいいんだけど。冥福を。

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