AIKIDO

投稿者: | 2021-04-13

 カナダで生活していた頃、26~28歳くらいまで、合気道を習っていた。映画監督になるため、そこまでなれなくても映画の勉強をするのが主な目的だったので、まさか自分でも武道をカナダでやることになるとは思ってもみなかった。合気道は歴とした日本発祥の武術の一つであり、習っているカナダ人たちはみんな日本の文化に興味がある人たちばかりだった。当然だ。結果的に私は日本人であることを利用したことになるのだろうか、とても沢山の友人をその道場で作ることができた。合気道無しでは私のカナダ生活は語れない。

 なぜ道場の門を叩いたのか、きっかけは覚えていない。いつの間にかという感じだ。道場主は日本人の方だったが、クラスを担当するような上級のお弟子さんたちは、中国系や黒人の方など人種は様々ながら、みんなカナダ人だった。総数で50名はいたんじゃないだろうか、生徒たちも数名の日本人以外、道場には日本語を話せる方はいなかった。私としては英語の勉強のためには好都合だったし、恐らく私に対しても、日本語もそうだし、皆さんある程度の興味を持ってくれていたと思う。みんないい人たちばかりで、道場外でもよく食事やパーティーに呼んでもらったり、本当にかわいがってもらった。

 私が日本人だからということが唯一の理由ではないと自負している。私は、まぁ、めちゃくちゃよく練習した。頑張っている人はカナダでも応援してもらえるらしい。どこの国の出身だろうとも、毎日まじめに一生懸命に取り組む姿は人々の胸を打つらしい。
 身体をあれほど真剣に動かしたのは7~8年ぶりくらいだったし、高校の授業で柔道をやったくらいで、武道は素人同然だったので、最初は畳の上で動き回ること自体に慣れるまでがしんどかった。しかしまだ26歳くらいだったし、それこそ「気合い」が入ってからは、我ながらなかなかの上達ぶりだった。投げる技を覚える前にまずは投げられる練習を積むのだが、先輩方が私を投げ疲れるくらい連続で投げても、平気でサッと立ち上がれるくらい受け身がうまくなっていった。投げられる方が楽なんだと悟った。簡単にコツを言うと、投げられる時に、関節や筋肉などの力をなるべく抜いて、自分の身体の“しなり”を利用しながら宙に舞い、できるだけ相手の力を吸収して、最後力強く畳を叩き衝撃を最小限に軽減する。私と先輩の稽古を見ていた仲間が、「先輩の投げはキレがあってスピードが速いのに、投げられた私の動きはスローモーションのようだ」と褒めてくれた。私もそうできていた実感があって、とても嬉しかったことを覚えている。

 「カナダ人は初段を取るとすぐに免許皆伝だと勘違いして、自分で道場を立ち上げてしまい、失敗する」と師匠が嘆いていた。だから初段を取れるまでは、最低でも3年くらいかかるシステムにしていたのだそうだ。日本なら頑張れば一年くらいで初段が取れるらしい。
 私ももう少し長く滞在できれば初段まで行けたかもしれないが、三級の茶帯までで終わってしまった。日本でも続けることはできたかもしれないが、大好きな師匠の下じゃないと嫌だった。意味がなかった。もう師匠は引退されて、道場は他の人の手に渡ったらしい。いつかまた訪ねてみたい。

 みんな元気かな。

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