HERO

投稿者: | 2021-04-22

 自動車レースの世界最高峰に「F1」というカテゴリーがある。「F」はフォーミュラの頭文字で、「1」は第一番目のという意味だと理解している。「自分が世界で一番自動車の運転がうまい」と信じて疑わない人たちが、時速300kmを超えるスピードで疾走し、つまり命をかけて、一番早くゴールすることを目指す。

 このF1について日本での人気は、今年また新たに日本人ドライバーが参戦して、少しずつ回復傾向にあるのかもしれないが、昔に比べると随分とすたれてしまったように感じている。かつて1987年に中島悟さんがF1にデビューしてしばらくは、ちょっとした社会現象になるほどの人気だった。アラン・プロスト、ナイジェル・マンセル、ネルソン・ピケ、ゲルハルト・ベルガー、ジャン・アレジ、ミカエル・シューマッハなど、他にも今でも空で名前が言えるほど、私も熱狂的に楽しんでいた。彼らは私にとってはアイドルだった。
 カナダに住んでいた頃、モントリオールでF1カナダGPが開催されたときに、決勝には行けず予選2日目だけだったが、実際に現場に駆け付け観覧した。あまりのマシンの爆音におののいた。余談だがモントリオールの街中でミカ・ハッキネンに偶然出くわした時、柄にもなく「ハ~イ!ミカ!!」と思い切って声をかけてみた。振り返ってくれたミカは、とても大柄でめちゃめちゃイケメンだった。ミーハーとはあの時の私のことを差すと思う。

 その中で「音速の貴公子」と呼ばれたアイルトン・セナという、トップドライバーがいた。3回ワールドチャンピオンを獲得していて、強さと人気を兼ね備えた、私見だが、世界で最も著名なレーシングドライバーだと思う。彼が絶頂期にレース中の事故で亡くなったことがそう思わせる理由の一つでもある。テレビで事故のシーンを観ていたが、亡くなったことがいつまでも信じられなかった。いや、信じたくなかった。
 ブラジル人だった彼の遺体が空輸され祖国に戻ったとき、ブラジル空軍の戦闘機が出迎えたシーンをよく覚えている。地上では100万人以上の国民がセナを迎えたということだ。ブラジル政府が葬儀を執り行い、国葬としたとのこと。英雄への感謝の表し方なのかと思う。

 そんなブラジルの国民的英雄セナの逸話の中で、私がとても印象に残っているエピソードがある。セナがF1カテゴリーで初めて完走を果たしたレースでの事。6位でゴールしたあと力尽き、マシンに乗ったまま疲労で失神してしまい、メカニックから助け出されたそうだ。その後モナコGPでの6勝をはじめ、41回もの優勝を重ねるわけだが、そんな天才と呼ばれたほどのセナでも、初めての時は気絶してしまっているのだ。それだけ経験がないということは、「大変なんだ」ということを証明していると思う。
 私は特に若い人が何か新しいことに挑戦していて、頑張りつつもちょっと疲労の色が見えた時にはいつも、「セナも初めての時は失神したらしいよ」と励ましの声をかける。ただ最近は、「セナ」と言ってもポカ~ンとする人が多いのが、ちょっと悲しい。

 そのうちF1は、電気自動車レースになっちゃうのかな~?

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