Idea

投稿者: | 2021-06-20

 追いつめられると何をし出すか分からない。極限の状態で人間は普段の能力を超えた力を発揮する場合があると思う。生命に関わるような話ではない。例えば戦場で敵から殺されそうな状況に陥るとか、火事に巻き込まれて焼け死にそうになるとか、そういったことではなく、今日は仕事でアイデアを生み出すときの話。
 ビデオ制作や印刷物のデザイン等クリエイティブな分野に身を置く立場として、アイデアの創出は常に求められる。ディレクターが主たる責を担うわけだが、プロデューサーとしての私の発案はいくらあってもいい。私のアイデアを基に仕事が始まることもある。

 アイデアを生み出す方法として私が心がけているのは、一つはみんなが自由に発想してもらえる雰囲気を作ること。私の仕事は誰か一人の力だけでやっていくのはなかなか厳しく、複数の意見・アイデアを検討し或いは織り交ぜながら制作を進めることが、いい作品を作るポイントになると思っている。だからみんなが思っていることを言い合えるような体制や関係を築き保っていきたい。それぞれが自由に考え発言できることは、個々の成長に繋がると信じているし、そうすればグループの成熟が導き出されると思う。

 それでは個々に目を向けた時に、どうすれば良いアイデアが生まれるだろうか。人それぞれ色んな方法があるとは思うが、一つの「出し方」として無視できない方法がある。方法と言うか、現象と呼ぶ方が正しいかもしれない。それはある意味では「自由」と対極にあるもの。「追い込む」という出し方。
 アイデアを生み出すために時間を使えば、納期という時間に自然と追い詰められていく。つまり環境に苦しむ状況が出来上がる。また考えても考えてもいいアイデアが出てこないと、精神的に「焦り・不安」や自分の力の無さを痛感する「失望感」等が入り交じった自己嫌悪感に押しつぶされそうになる。いよいよになってくると「もしこのまま何も出せなかったら、もう仕事がもらえなくなる」という恐怖感にも苛まれる。この環境的にも精神的にも究極に追い詰められた窮地に至らないと、働き動かない機能が人間のどこかに備わっている。そこまで行かないと生まれてこない起死回生の鮮烈なアイデアがある。
 世の中にはそういうギリギリの世界で生きて、そこに生きがいを見出している人たちがいる。もしくはそこまで行かないとアイデアが出せない人種がいる。そこへたどり着くとアドレナリンかドーパミンか知らないが、何か得体の知れない“○○ミン”みたいなものが流れ出してくるのかもしれない。もしかしたらそれは麻薬とか覚せい剤のような、脳を覚醒させて気持ちよくさせる役割を果たしてくれているのかも。だとしたら、「抜く」のは非常に難しく、一種の精神病にかかっている状態と言えるのかもしれない。とても長生きはできなそうだ。

 私がそこまで行ったことがあるかと聞かれれば、確証はない。いいアイデアが出たかは別として、しかし自分で感じた限界に近いと思えた相当に辛いところまでは何度か行った。そこまで行くのは非常に辛いし、消耗してしまうのでなるべく避けるようになってしまう。もう一度行ってみろと言われたら尻ごみを覚えるが、一つ言えることは、そこを乗り越えた時の景色は驚くほど晴れ晴れとしていて、抜群だった。

 たまに「もう時間が無いよ~」などと煽ってみる

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