ビリーブ

投稿者: | 2021-06-28

 ミミ・レダーという映画監督がいる。人気テレビ番組の「ER」というドラマの監督として有名な方だそうだが、「ER」については私は残念ながらそんなにちゃんとは観ていない。映画の方では、本当にこの方の映画は“はずれ”が無いのではないだろうか。どれも凄く好きな映画ばかりだ。「ピースメーカー」、「ペイ・フォワード」「ディープ・インパクト」等、素晴らしく面白い映画だった。どれもDVDも購入したほど気に入っている。同じ監督だとは気づかず購入し、よくよく見てみると同じ人だったのが事実。そんなことは他になく、よっぽど作品性と相性が合う証拠だと思う。

 彼女の映画にはしばしば非常に優秀で感情的な女性が主人公として登場する。何と言うか、いかにも頭が良くて近寄りがたいと言うか、完全無欠の存在として登用されている。男だらけの女性差別が公然と横行する社会で、彼女たちが奮闘する生き様にライトが当たる。どの作品を観ても、彼女たちが正義を貫こうと毅然としていて、とても魅力的に映っているのだ。そういう見せ方をさせたら、彼女は第一人者かもしれない。
 ミミさんは元々は撮影技師の出身と言うことで、カメラワークにはこだわりがあるのだろう。あまりよく観ていない「ER」ではあるが、その中で「ステディ・カム」と呼ばれる、いわゆる“手ブレ”を最小限に抑えるための器具を用い、撮影カメラを体に括り付けて撮影する方法を多用していた。サッカーの試合で、よくサイドライン際に立って撮影しているカメラマンがいるが、あれがステディ・カムだ。まるで観る人が映画の中の空間を歩いているような、非常に臨場感がある映像の収録が可能になる。病院内の画はほとんどステディ・カムによるものではなかっただろうか。
 他方でその主人公の女性をサポートする男優陣も、非常にチャーミングに撮られている。「女性が好きそうな男性って、こういうことなんだろうな」と、ストーリーを少し離れていつも感心する。強くて優しくてユーモアがあって、そして色気があって。参考にできるのならしたいものだが……。

 久しぶりにミミさんの映画、「ビリーブ 未来への大逆転」を観た。アメリカで初めて最高裁の判事に就任した、ある女性の半生を描いた伝記作品だ。私の感覚で言うと、女性が社会進出なんて今はもう当たり前で、女性蔑視のニュースなどを目にすると、「古いな~、そんなことやってる場合じゃないでしょ」と残念に思う。ハッキリ言って女性がいなかったら私の人生は成り立たっていない。見る人が見れば私の中にも女性蔑視の要素があるのかもしれないが、私の意識としては、そういう話題は飽き飽きしていてむしろ嫌悪感を覚える。
 だからこの映画も見始めはちょっと嫌だった。私が生まれる前からの実話がベースなので仕方がないのだが、でも想像するに1952年生まれのミミさんも、ハリウッドという男性社会の中で、ひたむきに努力を重ねて這い上がってきたのかなと思う。この映画の主人公に自分を重ねて撮ったのかなと考えると、何だか胸が熱くなる。言うまでもなく、今回の主人公も素敵な人に映し出されていて、魂の息吹を感じた熱くて素敵な映画だった。ミミさんにはいつまでも素敵な作品を届けてもらいたい。

 主人公の女性たちの姿はミミさんの生き様そのものなのかもしれない

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