土の香り

投稿者: | 2021-08-25

 私が小さい頃はまだ土の道路がたくさん残っていた。子供ながらに土埃が舞い上がるのが嫌で、早く全部アスファルトにならないかな~等と考えていた。あの頃から思えば街は随分と整備され近代化したと思う。街中で土が見えるのは公園などの区画された部分のみだ。今の子供たちは地面が土でできていることを知らないのではないかと疑ってしまう。

 キャンプが流行っているそうだ。山や森へ出かけ、敢えて不便な自然の中で家族や仲間同士で寝食を共にしたり、川や湖で遊んだり、昆虫などを捕まえながらトレッキングしたりと、人間の原点に返るような「自然と触れ合うこと」が人気を集めている。特に都市部に住む子供たちにとっては非常に貴重な経験になるかと思う。お陰でキャンプ用品を販売しているような会社は笑いが止まらないらしい。

 高校の時のある一人の同窓生が小学校の先生をしている。Facebook上でしか交流がないので確実なことを言うことができないのだが、この人は凄い。ぶっ飛んでいる。何が凄いって、まず投稿数が凄い。恐らく稼いでいるYouTuberはこんな感じなのかなと思わせるくらい(彼がYouTubeも使っているかは知らない)夥しい数の写真記事を上げてくる。その内容が多岐にわたっていて、勤務している小学校のビオトープに生息している生き物や畑で栽培している数種の野菜、田んぼで餌をついばむ野鳥や自分が食べたランチの写真、また珍しい形の雲や美しい夕陽と浜辺、そして極めつきはクレーターがクッキリ見える月や星々が眩しく輝く夜空の星座と、本当にいつ寝ているのかと心配になるほど毎日Facebook上で逐一報告がある。自宅で飼っているカブトムシなどの昆虫や様々な生き物も頻繁に登場する。その他、暇があればどこかの展示会などにも出かけ、見聞を広めているようだ。
 こういう人は本当に貴重な存在だと思う。授業などにお邪魔したことがないので、子供たちと彼がどんな関係を築いているのか推測しかできないが、私の子供の時を思い出しても、こんな素晴らしい先生はそうはいない。目をキラキラさせながら、何かしているその先生を取り囲んで興味深そうにジッと見守っている子供たちの様子が、私にはハッキリと目に浮かぶ。子供たちは幸せだと思う。こういう人がいてくれる限り、日本の教育はまだ大丈夫だと思わせてくれる。
 文科省の方針が悪いとか、環境が整っていないとか、給料が安すぎるとか、校長がアホだとか、忙しくて残業が多すぎるとか、不平を言うことがより良い環境を生むことがあると思う。主張し続けることは大切だ。けれども与えられた環境から知恵と工夫を凝らして、強く生きようとする彼の姿に私は感動する。恐らく彼は“強く”とか何とか、そんなことは全く考えていない。そんな風に考える人間は彼のようには生きられないのかとも思う。自然とそういう姿勢で生きられるのだろう、彼の存在は尊い。そういう先生の後ろ姿を見て育つ子供たちの成長がきっと未来を支えてくれる。

 キャンプの思い出では、カナダにいた頃キャンプに行って寝転んで夜空を見上げたときに、あまりにも大きく光る星々の一つ一つが今にも落っこちてきそうで、相当恐かったことを覚えている。いつも見ている同じ空とは思えなかった。子供たちにはそんな非日常的な発見を、こういった夏休みなどを使って是非たくさん経験して欲しい。コロナが治まってからの話だが……。

 土の地面が気温の上昇を抑えていたのかな~?

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