10年ほど前まで「mixi」というSNS上でたまに日記を書いていた。私はサッカーを観るのが大好きなので、そこには特に地元プロサッカークラブの試合結果や試合を観ての感想などを記していたことが多かった。今でも毎週よく観るヨーロッパサッカーについての記載も目立ち、言わば「サッカー観戦記」の側面を持つ日記だった。正直に言えば書くネタに困り、サッカーのことしか思いつかない日が多かったということだ。
だからというわけではないが、このブログを始めてからはなるべくスポーツの話はしないようにしている。スポーツのことを書くと“好きな人”にしか分からない内容になるし、私の強烈な私見が入ってしまうので、いろいろ公平さを欠くような気がして避けてきた。ところが昨日のオリンピックでのサッカーU-24日本代表の試合を観て一回ちょっと書きたくなったので、タブーでもないのだが、今日は破ってみようと思う。それによくよく考えてみるとスポーツの記載に関わらず、私の文章は残念ながら私の私見に偏った公平性を欠くものばかりで、そもそもどれをとっても“分かる人”にしか分からない文章だから気にしなくてもいいような気もしてきた。
24歳以下とオーバーエイジ3名で構成されたグループの中で、一人の卓越した技術をもつ20歳の若者がいる。幼いころからその才能を発揮させた彼は、10歳くらいでサッカー大国スペインへ渡り技術を磨いた。しかし所属チームがFIFAから18歳未満の外国人獲得に関する制度上の制裁を受けてしまい、13か14歳の時に帰国を余儀なくされる。その後日本のチームに入団し失意のまま研鑽を積むわけだが、18歳になり再びスペインの地に活躍の場を求め今に至っている。彼のポテンシャルは世界のビッグクラブが獲得に手を上げるほど本場でも評価が高い。私個人的にはサッカーに対する万感の思いを込めて期待している選手だ。
サッカー素人の私の私見ではあるが、今オリンピック大会での6試合を通して、彼のパフォーマンスは低調だったと思う。3点記録しているが、私に言わせれば最初の1点だけ。あとの2点は“ごっつぁん”ゴールだ。もっと決め切らなければならなかったシュートがたくさんあった。期待しているだけに厳しい評価になってしまう。ゴールよりも、昨日の終盤に左サイドでDFの股を抜き、二人をかわしてゴールに迫ったシーンは見事だった。私的にはあれが今大会の彼のベストプレー。
とにかくボールをキープできない。タメが作れない。ちょっとコンタクトされるとすぐに倒れてロストする。ファウルももらえない。昨日のPKを与えたシーンは彼のボールロストが原因で、前でキープできていれば起きなかった反則だ。技術系の選手にありがちな、ボールの取られ方が恐らく実際よりも「あっさりに」見えて、踏ん張って頑張っているように見えないのが気の毒ではあるが。フィジカル面での強度が足りなすぎる。
しかしこんなことを書きたかったのではなく、今日はあまりにも重すぎる責任を彼に担わせてしまっていたことを此処で謝りたい。日本中の期待を背負って頑張った彼らを批判できる人などいるはずがない。昨日の敗戦後の彼の涙を見てハッと気づいた。彼はまだ20歳の青年だった。私はたった20歳の若者に自分の『夢』を乗せた。彼のポテンシャルを見てしまうと、期待してしまうのは仕方がないことではある。しかしあの涙を見て、彼がどんなに精神的にキツかったか、恐怖に立ち向かって戦ったかを想像してみると、私はやはり謝りたい。追体験をしようともせず、結果だけを彼に求めてしまった。もしかしたらそういう過度な期待感が有能な若者を消耗させてしまうのかもしれない。多くの若者が潰されてしまったのかもしれない。プレーの精度に微妙な狂いを生じさせているのかもしれない。
サッカーのことだけに限ったことではないが、もっと我々が「育てる」ような視線で若い世代を見守る方がいいと思う。今回の経験が彼自身にとって、そして見守る側の我々にとっても、永く記憶に残り未来へ向かって実りの多いものになることを願って止まない。
選手、関係者の皆さん、ありがとう