だいぶ痩せてしまったせいで、もちろん良いことだと思っているが、困ったことに服が大きくなってしまった。服が成長したわけではなく、私が小さくなった。特にズボンが宜しくない。ブカブカのズボンをベルトで締めて、ウエストの周りにかなり皺が寄っていたことはもちろん知っていた。でも「どうせオレの服のこと何か、誰も気にしていないから」と構わずにいたら、職場の可愛らしい女性に「ズボン大きいですね」と不意にど真ん中の直球を投げ込まれた。動揺し返す言葉が見つけられず、呆然と見送ってしまった。まさか気づかれていたとは……。
50歳半ばでも休みの日はジーンズを穿いていて、そういう遊び着ならばシャツなどの“裾だしスタイル”で何とか誤魔化せるのだが、スーツ系がヤバい。夏場の生地が薄めのズボンは、それでもまだ小さめのものがあったので、誤魔化しながらも凌いでいた。誤魔化し切れていなかったかもしれないが。ところが段々秋が深まり、いよいよスーツを着る季節になってきた。恐る恐る仕舞ってあったスーツを引っ張り出し、試着してみた。
どうだろう、恐らくギリギリでアウトだと思う。ここ3,4年で購入したものがダメだ。ズボンのウエストの皺がやはり酷く、でもそれは何とか上着やベストで覆い隠してしまおうと思うが、上着のお腹周りがかなりブカブカだ。ボタンをしたまま上着の内側でスマホを見られるくらいの余裕がありそう。それに痩せると肩の辺りの筋肉も落ちるようで、全体的に“垂れた”と言うか、ずり下がった感じで1サイズ大きいように見える。姿見に映る私の立ち姿はかつての「一世風靡セピア」を彷彿とさせた。残念ながらカッコ悪い感じだ。痩せてカッコ悪くなるとは何とも無様で情けない。さて、どうするか。
差し当って紳士服店のホームページを2社ほど覗いてみる。思ったより安い値段で売っているという印象だが、それでもやはり何だかんだで1着3~4万円くらいはかかってしまいそうだ。できれば2着欲しいが、そうすると大きな出費になってしまう。車の車検が終わったばかりで懐が寂しいこの時期に……。1着で我慢するか。
そんなことを考えながらしばらくしてFacebookを開いてみると、先程の2社の紳士服店の広告が両社ともタイムライン上に出てきていた。初めてだったので少々びっくりした。泣く子も黙るGoogle様だから成せる業だと思うが、しかし何をしても見透かされる恐ろしい時代になったものだ。実際その広告を見て、購入をもう一度検討した自分がいて、その宣伝手法は理にかなっていると言わざるを得ない。やっぱりすごい。
こういう「着られない」という問題が出てきてしまうとは計算できていなかった。しかし洋服が着られなくなるからと言って、水泳などのトレーニングを止めることはできない。この体験を持ったまま過去に戻れたとしても、また同じことをするだろう。
考えてみると昨年の冬の時点ですでにある程度「痩せ」は進んでいて、今ほどではないにしても服に“着られている”感はあったのだろうと思う。「誰も見ていないだろうから」とブカブカのままやり過ごしていただけだったような気がする。今年もその方法でシレッと誤魔化しちゃおうか。いやぁ~!?
いやぁ~!?